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2001年4月号
ISOマネジメント/日刊工業新聞社
テーマ:実践ISO失敗事例に学ぶISO9000シリーズ推進のポイント

Part4. 成功の鉄則

自社に合った等身大のISOを
・トップダウン
・担当は兼務
・短期集中
・監査で徹底
×他社の真似
×できない手順書
×立派な文書

第1条 理想論ではなく現状業務でISOを構築する

(1)現在の業務が基本

人間の性として、初めてISOを構築しようとすると、“立派なISO”“かっこよいISO”を作りたがるものである。“どうせやるのなら、良いものを作 ろう”という気持ちである。この考えは非常に良いことであるが、これが最初の落とし穴になることが多い。ISO取得に成功するためには、最初から100点 満点を目指してはいけない。現状が、50点ならばせいぜい60点を第一ステップとして、地に付いたISOシステムを構築する方がよい。“うちの会社はレベ ルが低いから・・”という言葉をよく耳にするが、現在の事業が成り立ち顧客がいるということは、なにより基本的な業務はしっかりできている証拠であり、こ れが50点のレベルであっても、自信を持ってISOに取り組んでいただきたい。
そのような観点から、今やっている仕事とISO要求事項を比較して、抜けている部分や修正が必要なところがあれば、その部分を直せばよいのである。
特に経営者や事務局が、現場の実力を考えないで理想論のシステムを構築すると失敗するケ−スが多い。

(2)「理想論は、不適合の山」と考えるべし

ある大企業を訪問して審査をしたときに、設計管理でマーケティングから始まり何段階もの設計審査をしている会社があった。審査をしたところ、予測通り不適合の山であった。そこで、休憩時間に、設計担当者に尋ねた。「そんなにISOばかりで、肝心の設計をやる時間はあるのですか?」と聞いたところ、担当者 は「本当はできないし、必要もないと思うことが多いのですが、マニュアルに書いてあるんですよ。」との答えであった。そのようなマネだけはぜひとも避けたいものである。

第2条 担当者は現業兼務でOK

(1)適任者は、兼務でこなす

ISO取得を準備しようとしている企業から、「専任者は何人必要ですか」と、よく聞かれる。人が余っている場合は別であるが、中小企業ならば担当者は兼 務でも大丈夫である。若干負担は増えるが、昼間は日常業務をしっかりやり、残業時間や土曜日などの休日を活用するなどで充分対応できるレベルである。
ただし、先に述べたように、本当の意味での「適任者を」人選しなければならない。また、スケジュ−ルもしっかりと定めて行なわねばならない。
特に大事なステップは、「最初の文書化の部分」と「システムの現場浸透の部分」であり、ここでのポイントを押さえて行なえば、日常業務をこなしながら ISOの認証取得が可能である。

(2)経営者のサポートがポイント

ここでは、経営者のサポートが大切な役割を果たす事も付け加えておく。すなわち、いくら兼務で頑張れといっても、経営者が品質方針もつくらず、社内の部 門に対してISO担当者への協力を依頼もしないようでは問題である。
兼務で行なうためには、経営者自身の強い関心と、実行・支援が必要になる。

第3条 他社のマネをしない

(1)マネで苦労が2倍

ある建設会社にコンサルタントとして訪問した時の話である。社長から「他社の建設会社のマニュアルをもってきてくれ」と要請を受けた。ここの社長は、マ ニュアルは会社名を変えれば中身は同じでもいいと、考えていたのである。
そこで、コンサルタントは社長の要請を断れず、公開されている他社の品質マニュア ルを持参し、その会社ではそれを元に自社のマニュアルを作成した。
ところが、完成したマニュアル通りに実施しようとすると、現場が動いてくれない。社長がいくら言っても実行ができず、内部監査を行なうと不適合ばかり増 えて、一向に改善できなかった。理由を調べると、マニュアルに書いてあることは、同じ建設業でも仕事の仕方が全く違うため、現場でついていけなかったのである。
そのために、もう一度マニュアルを自社に合わせて作り直したため、苦労が2倍になってしまったのである。
また、書籍として一般に市販されているマニュアルをマネする例も多い。参考にするのは良いことであるが、マネをすると失敗するケースが多い。
なぜなら、紹介されているマニュアルの大半は大企業が構築したものであり、それを中小企業が利用しようとすれば、ムリが発生するのは自明の理である。
自社の仕事の流れを基本にISOシステムを作るのがISOの精神であり、他社のモノマネではなく自社に合ったマニュアルを作ることが成功の鉄則である。

(2)規格を理解する

自社にあったマニュアルを作るには、少なくともISOの規格と自社の仕事を比較して、どのように要求事項を満たすかを決める必要がある。そのためにも、 規格の正しい理解をしなければならない。間違って理解をしたために、無用の仕事を大量に増やしている例が非常に多い。ぜひ、知っている人に聞くなり、経験者を訪問するなりして、本だけでない実際のISOを正しく理解して取り組みたい。

第4条 トップダウンで推進

(1)意思決定が出来ない経営者

知り合いの経営者にISOの事をよく知っている経営者がいた。この中小企業の経営者は勉強熱心で、ISOの勉強会などがあるとせっせと数年間通っていた。しかし、ISOのシステム構築はもちろん、認証取得もしていない。「どうして、ISOをとらないんですか?」と尋ねると、「よく勉強して、納得してから取得したいと思います。」との答えであった。
また、ある会社ではISO認証取得を目指すべきかどうか、社内会議を開いて検討している例もあった。その結論はいつも、もっとよく調べてからとか、品質や仕事のやり方がもっと良くなってからやるとか、いっこうに進まない。
ISO準備に際して検討することは良いことであるが、無用に時間をかけて検討しすぎるのも問題である。

(2)経営者の決断が必要

上記のような会社が多いのも事実である。こうした会社ではISOがなかなか進まない。こうした会社は、ISOを取得しても経営改善に役に立つ可能性は低く、せいぜい名刺に認証マークを印刷した、「広告宣伝」だけとなってしまうだろう。
ISOに成功するためには、経営者の強い意志が大事である。ISOは品質方針策定から始まる会社全体の経営革新ツ−ルである。経営者がISOというツ− ルを利用して“会社を良くしよう”という強い意志がすべてである。
ISOに成功するためには、こうしたトップダウンがポイントとなる。社員の顔色を見ながら、社員が協力してくれるならば取り組もうという消極姿勢では、 活きた経営革新につながるISOは取得できない。

第5条 低コストでISOを取得する

(1)意外とかかる内部コスト(人件費)

部品を製作している70名程度の会社でISOを取得した。その内容を、社長から伺って驚いてしまった。なんと、専任者が2人がかりで2年もかけて取得したのであった。そこで、社長に「一体人件費はいくらかかかったのですか?」とたずねたところ、担当したのが管理職クラスであったので、3千万円以上かかったという。
この会社は、ヒーターの研究開発で売上高・利益も良かったので、それだけの人件費をかけても大きな支障とならなかったが、一般の中小企業ではとても無理な話である。低コストでISOを取得するためには、目に見えない内部コストにも配慮しなければならない。

(2)コンサルタントの活用はコスト削減につながる

一般にコンサルタント料と言うと、“当社にはコンサルタント料を支払う余裕がない”という言葉がよく返ってくることが多い。
しかし、冷静に考えればコンサルタント料ほど安いものはない。上記の例では、管理職を専任にして大きな人件費をかけている。もし、上記の会社がコンサルタントを活用していれば、管理職を専任者にする必要もなかったし、管理職であるから残業代も発生しない。結果的に数百万円のコンサルタント料だけで済んでいるはずである。
コスト意識のある経営者は以下のようなことを言っている。“コンサルタント料とは、少し高めの新入社員を1年間臨時に雇ったようなものだ。それでISO が取得できれば、かなり安いと思う。

(3)コストを下げるためには、綿密なスケジュ−ル管理が重要

上記の会社は研究開発型で、普段から特にスケジュールを定めて仕事をする習慣がなかったので、ISOも担当者任せであった。自社が独占している研究開発 の分野ならばそれでもいいかもしれないが、中小企業のISOではスケジュールの明確化が重要である。期限が決まっていないと、担当者もいつまでにやってい いかわからないし、いつまでもダラダラとなってしまう危険性が高い。限られた経営資源を有効に効率的に活用するためにも、コストをかけない効率的ISO推 進体制を望みたい。

第6条 短期間でISOを取得すること

(1)1年以内が大原則

ISOを認証取得した企業で、“しっかり準備・検討して取得しました”という企業がある。特に、大企業では1年〜2年、長い企業では3年にもわたって社 内での準備を進めていたところもあった。確かに、これも悪いわけではないが、中小企業には向いていない。その理由は、経営資源が続かないからである。大企 業のように人を多く抱えているわけではなく、ぎりぎりの人材で仕事をしているのが中小企業だからである。
当然、中小企業においては1年以内での認証取得をお奨めしたい。今までの実績では、早い企業では6ヶ月程度の準備でもしっかりやれば認証は、可能であ る。それが、第5条の低コストにもつながる。会社の状況と目的に応じて、1年以内でのスケジュール化をぜひ推薦したい。

(2)全社一丸となってISOに取り組むことが大事

短期でISOを取得するのであれば、会社の全従業員がISOに興味を持たなければならない。経営者が認証取得の理由やその経営上のメリットを説明し、従 業員全員がISOに前向きに取り組む企業文化を作りたい。
短期取得は、当然、集中的に準備・実行をすることが必要である。これは、必ずしも専任者を作ったり一日のすべてをISOの仕事に費やすという意味ではな い。先にも述べたように、日常業務をこなして残業時間を主体にISOの仕事をすることで充分である。
全員の意識と協力を集める事で、ISO事務局が短期にISOのシステム化・文書化及び実行が可能となってくる。そうでないと、いくら専任者が毎日頑張っ てもなかなか進まない。

第7条 内部監査で現場徹底

(1)内部監査で問題点を洗い出す

ISOは独自のシステムとして、内部監査の制度がある。これは、他部門の仕事がISOのルールに沿って行なわれているかどうかをチェックし、問題 点があれば指摘をすることが本来の目的である。この仕組みのお陰で、ISOシステムが継続的に維持向上できるのである。
さらに、ISOの内部監査にはもう一つの目的がある。この目的は、ISO取得準備期間に発揮される効果である。
ISOの現場徹底を図るためには、関係する全社員がISOに参画しなければならない。参画しなければ机上のISOで終わってしまう。ここで内部監査が効 果を発揮する。現場で内部監査を行えば、否が応なく社員をISOに巻き込める。現場で不適合の指摘を通じて、それまでISOと無縁であった現場の作業者 が、仕事でどこが問題点なのかを理解することが可能になる。
このように、「内部監査を何度も何度も行うこと」によりISOが現場に根付くのである。
この内部監査を行なうには、ISOの規格や会社のマニュアル・手順書を理解する事が前提である。すなわち、それらのルールに従って仕事が成されているか どうかを調べなければならないからである。したがって、内部監査員となるために、ISOに関してしっかり勉強ができる機会が自然と作られ、効果が大きい。

(2)内部監査で無駄を取り除く

上記の内部監査は、単に問題点の提起だけではない。それ以上に、効果的な仕事をやり方を検討するいい機会になる。すなわち、ISOの要求事項には「是正 処置・予防処置」があり、問題点の原因とその対策及びそれが効果的であるかどうかを調べるようになっているからである。
その様なチャンスを日常業務の改善につなげられるような体制を作っておけば、今までの問題点を解決するばかりではなく、非効率的で無駄な作業を改善する事が可能となってくる。確かに、ISOをうまく活用している会社では、この様なシステムを会社の経営・作業改善に活かしている。

第8条 薄いマニュアルでシステム構築

(1)業務レベル・社員レベルに応じたマニュアルづくり

一般にマニュアル作りというと、私たちはわかりやすいマニュアルを想定する。いわゆる、新入社員が読んでも理解できるマニュアルである。わかりやすいマ ニュアルであるから、業務の細かな部分まで書かざるを得ず、結果としてマニュアルは厚くなってしまう。
しかし、ISOでは、“新入社員でも理解できる、わかりやすいマニュアル”を決して要求していない。作成されたマニュアルで品質が維持できることを要求 しているだけである。つまり、言い換えれば、マニュアルがなくても品質が維持された仕事ができれば、大きな問題にはならないのである。したがって、社員の レベルに応じたマニュアルでよい。ベテラン社員が多ければ、当然マニュアルは薄くなるであろう。
一方では、ISOの基本は“会社の仕組みをマニュアル化”することである。50人の会社と1万人の会社を比べたら、後者の方が会社の仕組みが大きいのは 当然である。
中小企業は大企業に比べて仕組みが小さい。小さければ、当然、マニュアルも薄くなるはずである。

(2)仕事のポイントを押さえたマニュアル作り

ISOの文書は多ければいいというものではない。多い文書というのは、仕事のポイントを押さえていない場合が多い。なんでもかんでも文書化しているの は、仕事上どこが重要かを把握していないために、すべての事を記述しているだけである。もちろん、品質に関しても同様である。
この様な問題を避けるには、文書化をする前に「仕事・品質上の重要なポイント」を押さえればよい。最初にこの事を十分検討しないと、できもしない事を いっぱい書いたり、的外れの仕事を増やしたりする。したがって、何が顧客満足度で重要か、どのように行なえば効率的に行なえるか、を事前に社内でよく検討 することが、文書化のポイントとなる。決して、文書そのものを書く事が目的ではない。文書化は仕事のルールを明文化する手段であるが、目的と混同している例がよく見受けられる。

文書化のポイント
・自社に合った文書を作成
・文書体系の階層は少なく
・わかる、読めるマニュアル
・写真・イラストの活用

次に重要な事は、作成者の「書きたい文書」を書かず、読む人が「読みたい文書」を作る事である。そのためには、常に読む人の立場に立って、わかり やすくて読みやすい文書化を目指す事が必要となってくる。しかも、長くなく短くまとめることも大切である。一つの仕事を一枚の紙にイラストや写真を使い、 作業・品質のポイントを短文で表現することをお奨めしたい。
特に現場の作業者は、日常業務で忙しいから、何枚もある作業手順書をじっくり読んでいる時間はなかなか作れないのが実態である。そのような方に、読んでもらえるものを作るには、ぜひともストレートに頭に入るものにして欲しい。それと合わせて、何回か説明会などを開いて書いてあることを十分理解してもらうことも効果的である。

第9条 書いたらやる、出来ないことは書かない

(1)ISOは禁酒運転と同じ

現在の会社のレベルが、50点なのに100点のマニュアルを作成しているケースがある。特に、現場をよく知らない事務局が作成した場合に多い。そのようなマニュアルを作成しても、実際には実行できず、不適合のオンパレードとなってしまう。
自動車の運転で「乗るなら飲むな、飲むなら乗るな」という言葉があるが、ISOも同じである。「書いたらやる、できない事は書かない」が原則となる。

(2)慣れるまで3週間

できない事は書かないといっても、ISOの規格要求上、あるいは、市場クレームを減少させるためなど、どうしてもやらなくてはいけないこともある。その時は、現場のレベルに合わせてやり方を工夫しなければならない。記録類は必要最小限の項目に押さえるとか、書き方は略号を使ったり集約化して簡単にするな どの工夫が欲しい。また、作業そのもののポイントを押さえて、形や常識にこだわらない。さらに、作業者ができるレベルで実質的に効果があればよいという考え方に立つと効果が出てくる。
以上のような準備をして、現場に理解をしてもらったら、ともかく3週間は現場で実施してみる。この3週間を乗り切れば、後は習慣化して現場での抵抗も少 なくなり日常業務となってくる。従って、最初に3週間は現場と一緒になって、継続できるように定期的にサポートする事が、有効な運用方法の一つである。

第10条 自社にあった等身大のISOを構築すること

(1)すべての基本は「等身大のISO」

いろいろな観点から、中小企業がISO認証取得に成功するポイントを述べてきたが、全体をまとめると、「等身大のISO」という言葉に落ち着く。
仕事の効率化原則の一つに「ムダ・ムリ・ムラ」がある。ISOのシステム構築も同様である。
・ 何故、中小企業が理想論でISOを構築しようとするのか
・ 何故、ISO取得に専任者が必要なのか
・ 何故、他社のマネをしようとするのか
・ 何故、ボトムアップでISO準備をしようとするのか
・ 何故、ISO準備に多大なコストをかけるのか
・ 何故、ISO準備に長期間必要なのか
・ 何故、現場徹底がうまくいかないのか
・ 何故、マニュアルが厚くなるのか
・ 何故、出来ないことをマニュアルに書きたがるのか
すべての理由は、1点に集約できる。それは、ISO取得の際に無理をしようとするからである。
筆者は常に以下のような言葉を発している。「50人の会社には50人の会社のISOがある。1,000人の会社には1,000人の会社のISOがある。 何故、50人の会社が1,000人の会社のISOを取得しようとするのですか。等身大のISOが最も馴染むし、運用しやすい。そして、それが経営革新につながるのです」と。

(2)ISOは経営革新を実行する道具

5年前、10年前を考えると、常に世の中や市場が変化していることは一目瞭然である。しかし、企業や社員がそれと同じか、それ以上に変化や進化している=のであろうか。毎日の業務に忙しく、それをこなす事で精一杯の企業が多いのではないだろうか。世の中に合わせた変化や進歩ができている企業は果たしてどの 程度あるのであろうか。
大企業や銀行でも倒産が当たり前の時代であり、また毎月何千件もの倒産が発生している。そのような中で、企業を継続・発展させるためには常に企業を変化 させる努力が必要であろう。その道具の一つとして、ぜひ「ISO」を検討されて、経営革新を行なうための効果的な道具の一つとして、導入される事をお奨めしたい。

経営革新と自己革新を通して、お客様、社員、社会の
成長を創造していく。それが当社の使命です。
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