従業員の給料を上げるよりも、●●で生産性が上がる

正直に言います。私の家は妻と義理の母と、ミニチュアピンシャーを1匹飼った家族構成です。もらえるものなら、高い給料が欲しいです。
でも、一方で、この仕事をやっているからでしょうか。「もし自分の給料を倍にしたら、仕事の生産性や売上も倍にできるのだろうか?」と思ってしまうのです。
この素朴な疑問に対して、「ホーソン実験」ですでに答えが出ていました。
ホーソン実験とは、20世紀初頭にアメリカのメイヨー教授が、4つの実験を通して生産性向上は何が要因なのかを導き出すことが目的とするものでした。それぞれの実験を紹介します。
①照明実験
まずこの実験で、労働環境が生産性に影響するかを調べました。照明が暗い現場作業では生産性が低くなり、明るいと上がるという仮説で測りましたが、結果は「生産性に労働環境は関係ない」というものでした。
明るい環境では生産性は上がりましたが、暗い状況でも生産性は下がらず上がる結果になりました。作業条件と能率には関係ない結果になりました。
②組み立て実験
この実験で、女性6名に作業を工程別にリレーさせて行わせました。ただ、賃金を上げたり下げたり、休憩時間や食事の有無、部屋の温度の上昇、下降など労働条件を変えながら、生産性と作業能率を計測しました。
照明実験と同じく物理的な労働条件が悪いと、生産性は低下する仮設だったのですが、結果は労働条件が悪かろうと生産性は一定のペースを保ち、むしろ向上した結果になりました。
③面談実験
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
この実験で、メイヨー教授は従業員2万人、1人1人と面談して、仕事に対してどんな感情で働いているのかを聞き、個人の感情が仕事にどう影響を与えるか調べました。
すると、面談で話を聞いただけで、従業員の生産性が向上したのです。面談での会話は愚痴なども多かったのでしたが、従業員の労働意欲は、労働条件や賃金よりも、職場の人間関係や仕事に対する思いといった感情的な部分と切り離すことができないことが判明しました。
④配線作業実験
メイヨー教授は従業員を職種ごとにグループ分けして配線作業を行わせ、その共同作業の成果を調べました。
その結果、 それぞれの労働者は自分の持てる力をすべて出し切るのではなく、状況や場面に応じて自ら労働量を制限していることが分かりました。また生産性の違いは労働者の能力よりも意識によるところが大きいことがわかりました。さらに品質検査では、上司と従業員との間に良好な人間関係を築いているほうが、より欠陥やミスの少ない製品を製造できることもわかりました。
この4つの実験より、生産性向上には作業環境ではなく人間関係が影響することがわかったのです。あ、給料を上げなくて良いというわけではないです。給料を上げないと、今度は離職のリスクが増えます。参考資料も置いておきます。
では、会社が人間関係を良好にする仕組みとはどのようなものか、以下のような例が考えられます。
l 人事評価と面談:会社が求める人材像を、評価制度を通して従業員に確認させ、定期的に面談していくことで、従業員にとっての将来の見える化と、仕事への意欲が高まります。
l 目標管理制度:半年~1年間後の将来像と、面談やミーティングなどを通して定期的に確認することで、従業員の成長を促します。
l 研修:孤独な作業に追われる従業員に効果的です。日ごろコミュニケーションがとれない従業員同士が、スキルアップや意識向上のための研修の場を通して労いと感謝の言葉を共有化していくだけでも生産性は違ってまいります。ちなみに現在、介護業界限定ですが、茨城県で助成金を使って費用の負担がかからずに研修ができますので、ご活用してみてください(お申し込みは7月19日までです)。
会社のやるべき生産性向上をつねに検討しながら、対策を取っていきましょう。
株式会社マネジメントセンター
主任コンサルタント:小山 邦広
(登場人物は、敬称略にしております)
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