高齢者虐待の現状と、私たちができる対策

今日は、今現在の高齢者虐待の現状を知っていただこうと思います。まず、全国で、介護職員による虐待件数はどれくらいあるのでしょうか?
厚生労働省:令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果より
令和2年度では、虐待と相談・通報された件数は約2100件、虐待と判断された件数は約600件です。
ちなみに全国で介護職員は約210万人いるといわれています。確率としては0.028%、1万人に2,3人いるかの割合で虐待を起こしていることになります。
実際は、複数で虐待しているパターンもありますので、もっと割合は多いと思われます。
ちなみに、虐待とはwikipediaでは、以下のように定義されています。
虐待: 繰り返しあるいは習慣的に、暴力をふるったり、冷酷・冷淡な接し方をすること。 具体的な内容は様々で、肉体的暴力をふるう、言葉による暴力をふるう(暴言・侮辱など)、いやがらせをする、無視をする、等の行為を繰り返し行うこと。 (wikipediaより 2022/4/28現在) |
つまり、高齢者に手をあげることばかりが、虐待ではありません。
厚生労働省で定義されている虐待には、5種類があります。
身体的虐待 | 暴力的行為によって身体に傷やアザ、痛みを与える行為や外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為 |
心理的虐待 | 脅しや侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせ等によって精神的に苦痛を与えること |
性的虐待 | 本人が同意していない、性的な行為やその強要 |
経済的虐待 | 本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること |
介護等放棄 (ネグレクト) | 必要な介護サービスの利用を妨げる、世話をしない等により、高齢者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させること |
この5種類の虐待には、現状、このような割合で発生しています。
厚生労働省:令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果より
この統計では、ひとつの虐待で複数合わせたものがありますので100%超えるのですが、それでも発生している虐待のうち、20%以上の割合で介護等放棄(ネグレクト)と心理的虐待が含まれているのが特徴です。
さらには、虐待のニュースの報道の仕方も変わっています。
虐待が発覚した場合のニュースとなると、従来だと、このニュースのように身体的虐待が取り上げられることがほとんどだったのですが・・・
最近は、心理的虐待のみでもニュースとして取り上げられるようになってきました。
では、虐待はなぜ起きるのでしょうか?代表的な虐待の発生要因を取り上げました。
教育・知識・介護技術等に関する問題 | 290件(48.7%) |
虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等 | 132件(22.2%) |
職員のストレスや感情コントロールの問題 | 102件(17.1%) |
倫理観や理念の欠如 | 87件(14.6%) |
人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ | 63件(10.6%) |
厚生労働省:令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果より
実は、本人の資質による割合が意外と少ないのがわかります。強いて言えば、「倫理観や理念の欠如」でしょうか?どちらかというと、管理する側の割合が多いのが特徴です。
「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」は、介護職員をどのように管理していくのかに失敗した結果です。
「職員のストレスや感情コントロールの問題」、「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」についても、現場管理の問題として、結果として虐待が発生してしまったと考えるといかがでしょうか
とはいえ、「教育・知識・介護技術等に関する問題」については、多かれ少なかれ何かしらの対策をたてているにも関わらず、依然として問題としています。
ここで提案を申し上げると、教育の内容を見直してはいかがでしょうか。
虐待を教育として教えるべきなのは、虐待の内容・種類や法整備なかりではなく、虐待がなぜ起きるかの原因を追及して、対策を法人や現場でどう立てられるようになるかの仕組みではないかと考えています。
さらに踏み込むと、虐待は介護職員の心身の問題を放置した結果、表に出た現象だと考えています。
そうなると、虐待は第一に、日ごろの人間関係や介護職員のストレスケアをどう向き合うのかなど、予防の観点での対策が必要になります。特に影響力のある管理者・リーダーが自分自身の感情と向き合って、周囲の空気を悪化させていないか?そのような観点が虐待予防に求められます。
そして、法人全体の対応として実際に虐待が起きた場合の対処と、再発防止の対策、さらに踏み込むと最悪の事態に対応したことも検討しなければなりません。
最後まで、お読みいただきありがとうございます。
株式会社マネジメントセンター
主任コンサルタント:小山 邦広
oyama@isommc.com
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