さらなる処遇改善加算の向上で、介護職員の処遇は本当に上がるのか?(小山 邦広)

厚生労働省のサイトをチェックしていたところ、平成30年10月31日に第163回社会保障審議会介護給付費分科会が開催されたようです。

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000376595.pdf

 

 みなさんも、「平成31年10月に消費税率が10%に上がるので、勤続10年務めた介護福祉士に月8万円の処遇改善加算が出る」という話は聞いたことがあるかと思われます。この議事録からは、徐々に方向性が出てきている感じになっているように思えます。この分科会を通して、政府としての検討したい方向性は、以下に読み取れました。

・処遇改善加算は、元々介護職員の人材確保で始めたが、人手不足の状況は変わらないのいので継続が必要である

・事業所内の処遇改善加算の配分について、「①経験・技能のある介護職員」、「②他の介護職員」、「③その他の職種」の順に、一定の区別をつけてはどうか

・「①経験・技能のある職員」については、勤続年数10年の介護福祉士をベースに、同一の事業所・法人以外にも、他での介護業界での勤務した経験も評価すべき。また、介護福祉士をただもっているのでなく、技能を幅広く評価できるようにすべき

・処遇改善加算の取得要件として、一定のキャリアパスや研修体制ができていることと、取組が見える化していることを評価してはどうか

・経験・技能のある介護職員が多いサービス・事業所について、加算率を他の事業所・法人よりも上げてはどうか

 

あくまで、検討の段階ですので、また分科会でこの話題出ましたら、このブログにて報告したいと思います。

なお、この分科会の資料では、どの介護サービスに「経験・技能のある介護職員」の割合がいるのかも出ておりますので、併せて参考にしてみてください。

さて、「さらなる処遇改善加算の向上で、介護職員の処遇は本当に上がるのか?」なのですが、1年、2年で見れば処遇は確かに上がるものとみられます。来年予定されている処遇改善加算の変更についていうと、確かに長く勤める介護職員の処遇が良くなることは確実かと思います。特に、介護福祉士を持つ人で同じ職場で勤務しなくても、合計10年の実績があれば良いと明記されたことで、処遇改善の対象となる介護職員のイメージは、より詳しくなってきたと思います。 

ただ、怖いのは、来年10月に処遇改善を上げた場合、それをもって次回の介護報酬の改正(平成33年4月)に影響を及ぼすことでしょうか。今回の介護報酬の改正(平成30年4月)については、医療業界との同時改正で、かつ薬事関連の報酬が下がったことにより、結果的に介護報酬は微増したという背景がありました。「介護業界は今年4月で報酬を増やした。来年も処遇改善で報酬を増やす。なら、次の平成33年度の報酬改正は減らしても大丈夫だろう」と国が考えた前提で、経営を検討された方がいいと思われます。

ご存じの通り処遇改善加算は、報酬としていただいた金額より多くの金額を介護職員に報酬として支払わないといけないものとなっています。つまり、施設は経営・運営・修繕のための資金として残してはいけないものになっています。この状態で、平成33年度の介護報酬が下がるという前提に立った事業設計をしていかないと、今度は事業収益が赤字化し、介護職員の賃金の昇給や、賞与を予定額通りに支払うことが難しい事態が考えられます。そうなると、介護職員の年間所得ベースで考えると、処遇改善加算が変更になる以前と比べて変わらないという事態や、10年以上勤務された介護福祉士と、そうでない職員との不公平感を増す可能性も高くなるかと思われます。

現に、厚生労働省で公表している平成29年介護事業経営実態調査結果によると、通所介護に限って言えば、平均収益介護事業収益差引額が平成26年度では665千円/月(利益率11.4%)であったのに対し、平成29年度では259千円/月(利益率4.9%)になっています。これは平成27年度の介護報酬の減額(平成24年度に比べ、平均9~10%の基本報酬の減額)による影響によるものが明らかで、それが収益全体に影響を及ぼす結果となっていました。平成30年度は、報酬は提供時間帯の変更の関係で減額になった施設があったかと思うのですが、さらに減額になると予想して検討された方がよろしいかと思います。

(厚生労働省「平成29年介護事業経営実態調査結果:第8表 通所介護」より)

いずれにしろ、何かしら対策を立てないまま経営をされると、収益が以前より残らず赤字化し、介護職員の年間所得は上がってこないという見方になるのは間違いないでしょう。今のうちに3年後を見据えた経営を設計いくべきと心掛けてみてはいかがでしょうか。

 経営とは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をいかに活用していくかがポイントです。介護業界では、様々なところから、今後の経営につながる情報・ヒントが手に入ります。

 3年後以降に予測される介護報酬の減収に対して経営・事業形態をどうすべきか、稼働率をどう上げるのか、介護職員の仕事の満足をどうやって上げるのか、介護サービスの質をどうあげるのかなど、今のうちに行うべき対策はいくらでもあるかと思います。もし、よろしかったら弊社にご相談いただけますでしょうか。いつでもご相談に応じてまいりたいと思います。