コラム「介護業界はスポーツのような感覚に一歩踏み出した?出された?」

(株)マネジメントセンター

介護コンサルタント 小山 邦広

スポーツの世界に求められるのは?

2018 FIFAサッカーワールドカップ(W杯)で日本代表が健闘しています。事前の予想では、直前に監督が変わったこともあってか、「3戦全敗もあるんじゃないか?」との予想が多くあったかと思います。

しかしいざフタを開ければ、代表がコロンビアに勝ち(「サランスクの奇跡」と呼ばれるでしょうね)、本田圭佑がゴールを決めてセネガルと引き分けるなどでウレシイ誤算が続いています。この原稿を書いている段階で、まだポーランド戦の前なので何とも言えませんが、70%はグループ・リーグに突破したのではないかと思います(残り30%は、日本代表は事前の評判が良いとき時ほど足元をすくわれる傾向があることと、西野監督のアトランタ五輪代表監督になった時に2勝1敗で予選敗退したことが頭によぎるので)。

しかし、スポーツの世界は残酷ですね。事前の評判が高くても結果を残さないとボロカスに叩かれます。逆もしかりです。これはナゼなのかというと、当たり前ですが求められる結果がはっきりしているからなんですね。例えば、「相手に勝ったか?」、「点をあげたか?」、「記録を出したか?」など、「やった・やらない」で判定しやすいです。あと数値化もされやすいですね。例えば野球なら打率や防御率、相撲なら勝敗数、陸上や競泳はタイムなどこれもハッキリしています。つまり観客は、応援しているチーム・選手が出しているわかりやすい結果を出したという点について熱狂している面があるのです。たとえ、細かいルールを知らない人であったとしても、「日本がコロンビアに勝った」という事実に満足し、熱狂しやすくなることができるのです。

 

介護事業もスポーツのような世界になっていくのか?

さて、介護事業について目を向けてみましょう。私は介護事業はかなり高度なサービス業だと思っていますが、気を付けなければならない大きな特徴があります。それは結果が形に表しづらいという点です。

例えば、「良い介護をしている」という介護施設があったとします。何をもって良い介護をしているということになるでしょうか?例えば「利用者様がよろこんでいる」とか、「前に比べて元気になった」などが挙げられるでしょうし、おそらくその通りだと思います。しかし、これらのことはあくまで主観性や頭の中のイメージによるものであって、客観的な内容で評価する材料が薄いのが介護業界の特徴ではないでしょうか。少なくともスポーツの世界と比べて弱いかと思います。

今回の介護保険法の改正で、デイサービスではADL維持加算が新設されました。これは簡単に言えば、各利用者様の身体機能をバーセル・インデックス(BI)で測り、半年前と比べて利用者様全体で良くなる結果になったら加算対象になるというものです。今はたいした加算にはなりませんが(利用者様ひとりにつき月に3単位、もしくは6単位)、将来的には単位数が多くなることが見込めます。

もっとはっきりしているのは介護老人保健施設(老健)です。老健では基本報酬が大まかに3段階(在宅強化型、基本型、その他型)あります。この3段階は、利用者様が自宅に戻ることができたかなどを判断する「在宅復帰・在宅療養支援等指標」という数値が、どれくらいあるのかでほぼ分かれていきます。老健の基本報酬は、段階が違うと年間1,000~3,000万前後の収益に差が出ますので死活問題になっていきます。

私は今回の改正を通して、国は介護業界に対していよいよ本格的に、客観的な結果を出すことが求められているのではないか、今回の改正はその序章ではないかと考えています。そうなると現場のカンファレンスでも「利用者様が求めているのは何か?」というレベルから、「利用者様の求められるのは、それは数値化などで客観的なものであるのか?それをどこまで結果を残せばいいのか」と問われる時代が来ているのかもしれませんね。